目次
はじめに
Firefox Monitor をご存知でしょうか?
Firefox Monitor の利用を通して個人のパスワード管理についての個人的な見解を述べてみます。
そもそもFirefox Monitorとは?
Firefox Monitor とは「自分のメールアドレスでアカウント登録をしている各種サービス
」からデータ(メールアドレス
, パスワード
, 電話番号
…)の侵害状況を把握できるWebサービスです。
Firefoxアカウント のメインメールアドレスを登録すれば新たにデータ侵害が発覚した際に通知を受け取ることもできます。
使ってみた結果どうだったのか?
ははは・・・
その後どうしたか?
データ侵害を受けていたサービスのパスワードだけ覚えられる範囲で変更しました。
(メールアドレスを変えるのは大掛かり過ぎるので・・)
※問題点の列挙 から話を展開したいため、ここの対応はあえて穴(問題点)があるように創作しています。
一件落着・・だが・・
これで一件落着です。・・・と、果たしてそうでしょうか?
ここからはもう一歩踏み込んだ話をしていきます。
問題点の列挙
ここまでの話にはいくつかの穴(問題点)があります。
それぞれの内容を見ていきます。
Firefox Monitorで検知できるサービスには抜けがある
Firefox Monitor がどのようにしてデータ侵害状況を検知しているのか知りませんが、網羅的にサービスを検知できているとは思えません。
「抜けがある
」と証明することはできませんが「抜けがない
」とも証明できません。このような場合、悪い方(抜けがある
)に考えるのが適切です。
・・・と、調査から逃げようとしましたが、もうちょっと根拠を補強します。
まず Firefox Monitor の実態(侵害データの提供元)は Have I Been Pwned です。Have I Been Pwned から侵害データとして報告されているサービスは Pwned websites に掲載されています。
どのように Pwned websites を裏付けているかは主にペーストサイト(Pastebin…)からの流出の監視のようです。(Pastesより)
そのため特定の集団内のプライベートなネットワークで侵害データが共有されているような場合は当然に Have I Been Pwned 側からは検知ができません。
つまり Firefox Monitorで検知できるサービスには抜けがある ということです。
その後どうしたか? では検知できた各種サービスに対してのみパスワード変更をしていますが、それだけでは不十分だと言えます。
変更したパスワードが使い回しになっていては一件落着になっていない
これを表現するのに丁度良い画像が見つかりました。
出典: 大阪府警察「STOP!パスワード使い回し」 - https://www.police.pref.osaka.lg.jp/seikatsu/saiba/cyber_cyuikanki/9573.html
現代(2021年代)のログイン方式は「ID(メールアドレス) + パスワード
」の組み合わせが一般的です。
メールアドレスを複数所有し それを各種サービスで使い分けるのは労力的に困難なことから、第三者は「メールアドレスは各種サービスで使い回されている
」と容易に推測します。
つまり「1箇所のサービスからID(メールアドレス)が漏洩した
」 = 「全てのサービスからID(メールアドレス)が漏洩した
」という等式が成り立ちます。
上記を踏まえ、更にパスワードを使い回していたとします。
するとどうでしょうか、これもID(メールアドレス)の話で登場した等式が成り立ちます。
「1箇所のサービスからパスワードが漏洩した
」 = 「全てのサービスからパスワードが漏洩した
」。
まとめると、改めて最悪な状況(事実)と認識いただけるのではないかと思います。
- 「
全てのサービスからID(メールアドレス)が漏洩した
」 - 「
全てのサービスからパスワードが漏洩した
」
変更したパスワードが使い回しになっていては一件落着になっていない ということです。
その後どうしたか? では面倒だからと他サービスで使用されているパスワードに変更をしていますが、それだけでは不十分だと言えます。
第三者が他者のメールアドレスからデータ侵害状況を把握できてしまう
Firefox Monitor のトップページからお分かりいただけると思いますが、他者のメールアドレスでも検索ができてしまいます。
つまり 第三者が他者のメールアドレスからデータ侵害状況を把握できてしまう のですね・・
第三者が他者のメールアドレスを知り得たとして、その第三者がそのメールアドレスを検索すると以下のデータが第三者に渡ります。
- 他者のデータ侵害状況
- 他者の利用サービス(データ侵害状況に限定される)
これだけの情報が渡っただけではパッとしませんが、前述した
を組み合わせて考えると、以下のような不正ログインのフローが想定されます。
- 第三者がターゲットのメールアドレスを知る
- 第三者が Firefox Monitor からターゲットのデータ侵害状況を把握する
- ターゲットのデータ侵害状況をヒントに データ(
ID(メールアドレス) + パスワード
)を調査・取得 - ターゲットのデータ侵害状況やターゲットの特性などをヒントに「
手順3
」で得たデータで各利用サービスへ不正ログイン
「手順3
」は データがネット上にバラまかれるような事態でない限り成立しませんが、悪い方(成立する)を想定した方が良いのでしょう。
問題点に対する対処法
ここまで問題点を深堀りしました。問題の把握が進んだ次は自己防衛をしていかねばなりません。
考え出したらキリがありませんが、労力と相談した時の現実的な自己防衛策としては以下が考えられます。
- アカウント登録をしている全サービスのパスワードを最大文字種類・最大桁数で全て異なるものに設定する
- 二段階認証(2FA)に対応しているサービスは二段階認証(2FA)を設定する
- (余裕があれば)アカウント登録をしているサービスのID(メールアドレス)を散らして設定する
アカウント登録をしている全サービスのパスワードを最大文字種類・最大桁数で全て異なるものに設定する
最大文字種類・最大桁数
問題点の列挙 で色々と述べましたが、それ以前にログイン情報を推測によって破られてしまっては意味がありません。
また推測しなくとも機械的な「ブルートフォースアタック(総当り攻撃)
」で破られてしまっても意味がありません。
各サービス毎に設定可能な「最大文字種類・最大桁数
」に従って設定しておく必要があります。
全サービス
Firefox Monitorで検知できるサービスには抜けがある で述べた通り、厳密なデータ侵害状況が把握できません。
現状のデータ侵害状況をリセットする意味で全サービスを対象とするのが適切です。
全サービス
全て異なるもの
変更したパスワードが使い回しになっていては一件落着になっていない で述べた通り、1箇所のサービスから被害が拡大していくシナリオは望ましくありません。
仮に1箇所のサービスから漏れても他サービスに被害が拡大しないよう、あらかじめ全サービスに対し全て異なるパスワードを設定しておく必要があります。
(端的に言えば「パスワードリスト攻撃から身を守ろう
」です。)
二段階認証(2FA)に対応しているサービスは二段階認証(2FA)を設定する
アカウント登録をしている全サービスのパスワードを最大文字種類・最大桁数で全て異なるものに設定する を完全に対応していても、サービス運営元からデータが漏洩してしまっては 破られたも同然です。
二段階認証(2FA)は現在設定しているデータ(ID(メールアドレス) + パスワード
)が漏洩した場合の保険になります。
対応している全サービスに対して時間経過によってパスワードが変化する形式の二段階認証(2FA)をあらかじめ設定しておく必要があります。
(余裕があれば)アカウント登録をしているサービスのID(メールアドレス)を散らして設定する
アカウント登録をしている全サービスのパスワードを最大文字種類・最大桁数で全て異なるものに設定する ではパスワードに焦点を当てましたが、ID(メールアドレス)も全て異なるものに設定した方が「より安全」であることは明白です。
しかし全サービスに適用するのは労力的に困難だと想定されます。
自分の中で重要なサービスに対してのみ別のID(メールアドレス)を設定しておくのが現実的な路線だと考えられます。
Gmail であれば1アカウントで複数のエイリアスを設定できますので、それで実現してしまうことも可能です。
自身が払える最大の労力が「(余裕があれば)
」の意図になります。
余談(二段階認証(2FA)について)
二段階認証(2FA)に対応しているサービスは二段階認証(2FA)を設定する にて 二段階認証(2FA)を推奨していますが、設定後にログイン手段を失う事態には注意しなければなりません。
例えば Google Authenticator で設定後にスマートフォンの故障/紛失やQRコード移行失敗などでアクセス手段を失ってしまうと「詰み
」ます。
復旧手段が用意されているクラウドベースな Authy や Yubico の製品(物理キー)と組み合わせるといった「より堅牢」な手段も考えられます。
おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。これだけ書いておいて何ですが、率直なところ「めんどくせー
」じゃないでしょうか。
更に実感を得にくい領域の話ですので「モチベーションが維持できない問題」も出てくるかと思います。
本記事があなたのモチベーション維持の一助になると幸いです。